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2016年3月

場の相互作用

桜が咲き始め、春の到来を感じます。いつも通る道に、ビワの木があります。少し前から淡く白っぽい緑色の新芽が空へ向かって一斉に伸び始めました。そのエネルギーが吹き出すような姿に引き寄せられ、近づいて見てみると、その若葉の横に同じ色の小さな実。その小さな実も若葉と一緒に一生懸命胸を張っているようで、小学校へ入学する新一年生の姿が思い浮かびました。次の瞬間、新しい世界へ巣立つ子ども達を想い、心の中でエールを送る私でした。

 

 

先日、以前私が受け持っていた子どものお母さんから

「あのクラスの子ども達は、今も自分の主張があって、ぶつかり合いはあるけれど、お互いに気遣う心があり、子ども同士の結束が固い。その子ども達の持っているものをつぶさないようにしていきたい。」

という話をされ、「同じように育てている園はあるのに、どうして子どもの姿に違いが出るの?」ということを聞かれました。

 

普通は、「子どもの自主性を育てる為にはこうするべき」とやり方があると思われていますが、私が実践していたことは、“場”作りでした。

ただ単に、“施設”や“環境”という意味での“場”ではなく、雰囲気のような、その場の空気感を大切にしていました。

 

では“場”とはなんでしょうか?

 

その園では、『大人も子どもも自分らしくいられる場』ということを意識していました。その時の私自身の内側の状態を思い出してみると、“愛情で満たされているような感覚”です。

その“場”で過ごす日々は、子どものケンカももちろんありました。子どもを叱る場面や保育者自身も悩んだり、イライラしたりすることもありました。

その“場”で過ごす子ども達は、楽しいことを思い切り楽しみ、悲しい時は思い切り泣き、怒る時は大きな声で怒る…という、自分の感情に正直でいられました。

それが、“あるがまま”の子ども達の姿でした。

時には、大人にとって頭を悩ますような状態…“ふざけ”の度が過ぎたり、“やらないで”ということを繰り返したり、静かにしてほしい時に静かにならなかったり…ということもたくさんあり、イライラしたり、自信を無くしたりしました。

大人もそうした自分の感情を“いけない”とせず、その感情を受け入れながら、大人自身も“あるがまま”の姿で過ごしていました。

その感情をもろに子ども達へ向けることはなく。

 

子どもの“あるがまま”を受け入れようにも、大人自身の気持ちがイライラしたり、疲れてしまったり、他の人への配慮でハラハラしていたり…と、受け入れる余裕がない時もあります。

そのような時は、その自分の感情を“いけない”と評価をせず、“仕方がない”と正当化もせず、“あるがまま”を観て、個人としての自分ではなく、“場”を共有し拡大した自分を意識してみると、新しい発見があるかもしれません。

 

 

表面的に目の前の事象を見ると、一人ひとり別々の人間が同じ場所にいて、それぞれのことをしている…という風に見えます。

拡大した自分で俯瞰してその“場”を観てみると、別々の人間の集まりに見えますが、それぞれのエネルギーが影響しあって、その場ができています。

その“場”の中には、もちろん個人としての自分も含まれます。

 

 

ある日、1歳から2歳の子どもが数名いる保育室で、こんなことがありました。

Aくんは、お母さんが出産したばかりで赤ちゃん返り(赤ちゃんに戻ったかのようにぐずったり甘えたりする状態)をしていました。

その時Aくんは、寝転がって電車のおもちゃで遊んでいましたが、そこにBくんも一緒に遊びたくて近づいて来ました。

するとAくんが「こないで!やだ!」と怒り出しました。Bくんはどうにかして電車を取ろうと、「かして」と言ったり、こっそり近づいて手を出したりしていました。

そこに保育者Cが、Aくんが不安定なのを知っているので、Bくんを止めに入りました。

するとBくんが大きな声で怒り出し、Aくんが抱えている電車を奪いに行きました。

保育者Cの行動が火に油を注ぐ状態になったのです。

 

ここでのポイントは、エネルギーでした。

Aくんをそっとしておこうと思う保育者Cのエネルギーは“ケンカが起こるかもしれない”という“不安”のエネルギーでした。

Bくんの中にもおもちゃを貸してもらえないという“不満”のエネルギーが沸々と湧いていたところへ、保育者Cの“不安”エネルギーが加わり、爆発したのです。

『何かが起きないように…』という意識は、『何かが起きる』という風にエネルギーは作用します。

 

このケンカの結末は、面白い形で収束しました。

そこに状況を知らない保育者Dが部屋に入って来て

「わぁ!この線路Aくんが繋げたの〜?たくさん繋がったね〜!」とあっけらかんと言ったことで、その場の緊張したエネルギーがふわ〜っと解けて行きました。

その後は、AくんとBくんと保育者Dで穏やかに遊び始めました。

“不安”も“どうにかしなければ”というエネルギーも“何もなし”の状態の保育者Dが入ったことで、その場に発生してたネガティブなエネルギーが中和されたのです。

保育者Cが悪いとか保育者Dが良いとかではなく、これはその人が持つエネルギーの作用なのです。

“不安”などのネガティブなあり方は、ネガティブなことを引き寄せ、楽観的でポジティブなあり方は、ネガティブなエネルギーを中和します。

 

 

このように、一人ひとりが持つエネルギーが“場”に影響します。

イライラも不安も『何か起こるかもしれない』という思考も全てエネルギーです。

だからこそ、心を開いて落ち着いて目の前で起きていることを観てみてください。

すると、子どものケンカすら愉しめる自分に気がつくかもしれません。

 

一人ひとりがエネルギーを知ることで、“場”を創り出すことができます。

“愛に包まれた場”は、一人ひとりのユニークさ(独特な個性)が発揮できる場となります。大人も子どももユニークさを表現して生きることが真の自己表現であり、その自己表現は愛と歓びで成り立ちます。

一人ひとりのユニークさが発揮できる世界は、今まで私たちが見たこともないような新しい世界となるのではないでしょうか。


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多様性の世界の始まり

夕暮れに車で高速道路を走っている時のこと。夜の帳が下り始め、青から群青色へと移り変わる空とだんだん明るく輝き姿を現す星。それに見とれていると、一緒に空を見上げていた甥っ子が「ロボットが見えた」と呟きました。「どこどこ?」と甥っ子の目線を追うと、オリオン座。4つの星が四角く形作り、真ん中に3つ星が並んでいるその星座が、四角いロボットに見えたようです。昔の人もこうして星を見ながら神話を作っていったのかな…と、時を超えて太古の空を見ているような気分になった私でした。

 

 

最近、心が弱い人が増えているように感じます。

先日友人が、

「部下がすぐに落ち込んじゃうんだよね。クライアントに何か言われるとどーんと落ちて、私がアドバイスをすると『もういいです』ってふてくされて…。他にも少し叱られただけで落ち込んで田舎に帰っちゃう人もいて…困っちゃうよ。」

と話していました。

この話を聞いて、人に何かを言われるとすぐに落ち込んだり、自信がなくなってしまう人が増えているように感じました。

 

私も以前、人の評価が気になり、自分の本当に思っていることを曲げてしまうことがありました。そういう風に人に流されてしまう自分が嫌で、揺らがない自分を手に入れたいと思っていました。

2年ほど前にヒットしたアニメ『アナと雪の女王』のテーマのひとつは“ありのまま”、赤塚不二夫の天才バカボンのパパの台詞『これでいいのだ』これらの表現が揺らがない自分を手に入れる大きなヒントになるのではと思っています。

“ありのまま”“そのまま”“これでいいのだ”“これでよし”は、今の時代の新しい子育て・教育の軸になるのではないでしょうか。

 

 

連日報道されている、中学生の自殺の事件。担任に万引きのことを“指導”されたことがきっかけでした。同じようなケースで、先生たちに“指導”されて傷ついている子ども達の話をよく耳にします。

 

私も小学生・中学生の頃は、今なら“指導”されるようなことをいろいろやって近所のおじさん、学校の先生たちにたくさん叱られた体験があります。

例えば、友だちの家のガレージの屋根の上にバドミントンの羽が乗ってしまい、それを取ろうと棒で突いたら屋根に穴を開けてしまって怒られた…とか、

鬼ごっこをしている時に畑を走り回って畑のおじさんに怒鳴られた…とか、

中学生の時に学校に飴を持っていき、持ち物チェックで見つかって職員室に呼び出されて叱られた…などなど、挙げたらきりがないほどです。

中には今考えるとくだらないこともあります。その時の私を思い起こすと、“悪いこと”とは思ってなく、失敗して気づく、叱られて気づくというパターンでした。叱られて初めて『ダメだったんだ』と気づいたことによって、何か行動する前に『これ、大丈夫かな?』と良く考えるようになりました。

その叱られた体験を見てみると、“行動そのものに対して注意された”のであって、私の存在そのものを否定された体験ではなかったのです。

そして、行動を改めればいいだけであって、私自身は“そのまま”“ありのまま”でいいんだと存在は認められていた体験でした。

 

 

エジソンが、学校に入って3ヶ月で退学させられたという話は有名です。『なぜ?どうして?』といろいろなことに疑問を持ち、知りたがるエジソンは、「1+1=2」と教えられても「1つの粘土と1つの粘土を合わせると大きな1つの粘土になるのに、なぜ2なの?」と先生を困らせたり、「なぜ物は燃えるのか?」と藁を燃やして、納屋を全焼させてしまったり…と、いくつもの逸話があります。周りの理解が得られないにも関わらず、エジソンは繰り返し自分の疑問を追求・実験したのです。

その背後には、母親の存在があったという話は聞いたことがあると思います。もしもエジソンの母親が“問題になるから”と彼の興味の芽を摘んでいたら、偉大なるエジソンの発明は、世界に表現されることはなかったでしょう。

そこには、母親の絶大なる“信(信じる心)”と“愛”があったのです。

 

人は、“信”と“愛”の場があって初めて、安心して自己表現ができます。

その肯定的な土台があるからこそ、個性が発揮できるのです。

 

今の世の中、なんでも“ネガティブな想像”が先に立っているように思います。

悪いことが起こらないように・・

失敗しないように・・

叱られないように・・

嫌われないように・・

これでは、“何か悪いことが起きる”という土台です。

 

では、“信”と“愛”という“肯定的な土台”とはどういうことでしょうか。

これは、“ポジティブシンキング”とは違います。

私たちが住んでいる世界は、相対的ですから“ポジティブ”があると“ネガティブ”がそこにはあるのです。

 

“肯定的であるとはどういうことなのか?”

“肯定的な土台に立つとどんな感覚なのか?”

と、探究してみて下さい。

 

 

 

いろいろな問題が噴出している今、『肯定的な世界』に生きている私たちなんだということを体験してみましょう。

『肯定的な世界』に生きていたら、一人ひとりがいきいきと個性を発揮し、自分の足で揺らがずに立って生きていくことができると思います。

自分とは違う個性も受け入れることができる、心の器の大きい人として。

 

これは、真の多様性の世界の始まりであり、多様なものの和合を創り出していくプロセスなのだと思います。

 

その根底にあるものは、“信”と“愛”の土台です。




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