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安心の場

ツツジの花が満開の今日この頃…普段何気なく歩いていて殺風景な街中も、ツツジの花で華やいで見えます。

一斉に陽に向かってパッと開いている花達と、親鳥が運ぶ餌を巣の中で口を開いて待っているツバメの雛とが、似ているように見えます。

どちらの姿も、エネルギーを全力で求めているような生命力を感じます。

動物も植物も子どもも、ぐんぐん育つ、生命力溢れる季節。私にもエネルギーが巡っているような…そんな感覚があります。

 

5月に入り、保育園・幼稚園での新しい生活に慣れて来た子どももいれば、なかなか慣れずに毎朝泣きながら親と離れる…という子もいる、そんな子どもひとりひとりのペースが見えて来る時期です。

毎朝泣いても親と離れた後はすぐに泣き止んで遊び始める、というケースが多く、“毎朝泣く”ことが、心を切り替える為の“儀式”になっているようです。そうしている内に、ある日突然あっさりと「バイバイ!」と離れて行く時が来て、お母さんの方が「え、それだけ?」と拍子抜けてしまうこともあります。

 

“これくらいの時期にはこうなってほしい”という親や保育者の思い通りにはいかない事があります。

大人の思いと子どもの姿とのギャップがあるのです。

 

以前、新しいクラスに進級して1週間経っても、ほとんど一日中泣いて過ごしている子がいました。なかなか慣れないその子に、親も保育者もやきもきしていました。

その子は年度末に1週間熱を出し、その前のクラスの最終日に来られなかったので、その時のクラス担任だった私は、

「きっと、きちんとお別れをしていないから気持ちが切り替わってないのかもしれない」と思い、進級したクラスへ行き、その子を膝に乗せて、目を見ながらきちんと伝えました。

「〇〇くんはひとつお兄さんになったから、新しいお部屋になったのよ。新しいお部屋に行っても、〇〇くんのことは大好きだからね。」

というような事を話すと

「わかった」

と言い、最後に私にぎゅっと抱きついてから、サッと離れて行きました。

その後も時々泣くこともあったようですが、前ほど泣かなくなりました。

 

子どもは“安心”できると自由になります。

“大人から離れられない”ということは、まだ“安心できていない”ということです。

 

私はよくカモの親子の姿を思い出します。

カモの親子が歩いている姿を見ると、親ガモはペタペタとほぼ一定のペースで歩いています。時々止まっては足もとの何かをついばみ、また歩き出す…といった様子です。

小ガモは、その親ガモの周りを自由にちょこまかして、小ガモ同士じゃれ合いながら歩いています。時にはトトト…と親ガモを追い抜き、そこで何かを見つけるとそれをついばんだり、他の小ガモとじゃれたりしている内に親ガモはペタペタとまた追い抜いて行きます。

しばらくして置いて行かれていることに気づいて小ガモが追いかけて行く…という風で、抜きつ抜かれつしながら歩いています。

このように、小ガモは安心の範囲の中で自由に行動しているのです。

 

子どもには親との安心の距離感というものがあるのです。それはただ物理的な距離ということではなく、心の安心感というものです。

“安心の場”になるまで、子どものペースに添いながら、大人が手助けすることが大切です。

子どもに出来事をきちんと伝えている自分がいるだろうか、今。

きちんと子どもの目を見て向き合っている自分だろうか、今。

子どもの思いを否定せずに受け取っている自分だろうか、今。

とひとつひとつを、その最中に自分を観察してみてください。

「この子はいつも泣いているから、話しても無駄」と思わずに、どんなに小さい赤ちゃんでも、丁寧に語りかけ、接する事を重ねていくなかで、子どもが安心できるような場となっていくのです。

 

大人と子どもの信頼関係と絆が安心の場を作ります。

いつまでも慣れなくて、泣き続けている子どもに対して、「なかなか泣き止まない子」としてその子を扱うと、その状況は継続します。

 

子どもの力を信じて、安心の場を築き上げていく必要があります。

それは、大人と子どもとの共同作業のようなものかもしれません。

初めは抱っこしていないと泣き止まなかった子どもが、抱っこで安心すると、次は膝の上でも安心できるように…膝の上で遊び始めると、徐々に隣に座って遊び始め、時々少し離れたところにあるおもちゃを取りに行くようになり、気づいたら他の子どもと遊んでいる…という具合に子どものペースで安心の場が広がっていきます。

 

時間がかかったとしても、子どもの力を信じて、「大丈夫」という気持ちでどっしり構える…そういう大人のあり方が、子どもの“安心”に繋がるのではないでしょうか。


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